東京地方裁判所 昭和44年(特わ)92号 判決 1969年6月02日
本籍
東京都渋谷区千駄ケ谷四丁目二三番地
住居
同都同区西原二丁目四六番地
旅館業
内田文雄
大正四年七月一七日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官川島興出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役四月及び罰金四五〇万円に処する。
右罰金を完納しないときは、金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
但し、本裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、東京都渋谷区千駄ケ谷四丁目二二番地において旅館玉荘を、同四丁目七番地において旅館深草をそれぞれ経営していたものであるが、自己の所得税を免れるため売上の一部を除外して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和四〇年分の実際課税所得金額は、別紙一修正貸借対照表並びに別紙四税額計算書各記載のとおり、
一、六六八万〇、三〇〇円であつてこれに対する所得税額は七七四万二、六七〇円であつたにもかかわらず、昭和四一年三月一五日、同都渋谷区宇田川町二八番地所在所轄渋谷税務署において同署長に対し、課税所得金額が三八三万七、九〇〇円でこれに対する所得税額は一〇六万〇、七六〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の所得税額と申告税額との差額六六八万一、九一〇円については法定の納付期限までに納付せず、もつて不正の行為により右同額の所得税を逋脱した
第二、昭和四一年分の実際課税所得金額は、別紙二修正貸借対照表並びに別紙五税額計算書各記載のとおり、
一、八八七万三、八〇〇円であつてこれに対する所得税額が八九四万九、七九〇円であつたにもかかわらず、昭和四二年三月一三日、前記渋谷税務署において同署長に対し、課税所得金額が三七二万八、九〇〇円でこれに対する所得税額は一〇六万〇、七六〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の所得税額と申告税額との差額七八八万九、〇三〇円については法定の納付期限までに納付せず、もつて不正の行為により右同額の所得税を逋脱した
第三、昭和四二年分の実際課税所得金額は、別紙三修正貸借対照表並びに別紙六税額計算書各記載のとおり、
一、三四七万三、〇〇〇円であつてこれに対する所得税額が五九四万七、七〇〇円であつたにもかかわらず、昭和四三年三月一三日、前記渋谷税務署において同署長に対し、課税所得金額が四七三万三、〇〇〇円でこれに対する所得税額は一四六万七、四〇〇円である旨内容虚偽の確定申告書を提出して、正規の所得税額と申告税額との差額四四八万〇、三〇〇円については法定の納付期限までに納付せず、もつて不正の行為により右同額の所得税を逋脱した
ものである。
(証拠の標目)
(一) 全般について、
一、内田まつの検察官に対する供述調書
一、押収にかかる総勘定元帳計九冊(昭和四四年押第四一四号の2ないし7、12、13、14-以下枝番のみ示す)、元帳二綴(9、10)、所得税確定申告書計六通(19ないし24)、青色申告決算書綴計二綴(25、26)
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一〇通、検察官に対する供述調書二通並びに同人作成の上申書書一〇通
一、被告人の当公判廷における供述
(二) 別紙各修正貸借対照表の勘定科目のうち、
(1) 普通預金、通知預金、定期預金、貸付信託、商工債券について、
一、大蔵事務官石川三夫作成の預金残高及び受取利算調査書並びに簿外預金検討表
一、大島光臣作成の証明書(昭和四三年八月一日付)
(2) 未収金について、
一、伊部禧作の大蔵事務官に対する質問てん末書
(3) 貸付金について、
一、大蔵事務官石川三夫作成の簿外取得固定資産等調査書
一、井沢幸夫の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、押収にかかる預り証等一袋(8)
(4) 前払金について、
一、鈴木順治作成の回答書
一、大蔵事務官石川三夫作成の簿外取得固定資産等調査書
(5) 事業主貸について、
一、大蔵事務官石川三夫作成の事業主勘定調査書
(6) 建物、設備、車輛運搬具、器具備品、譲渡所得売却損について、
一、大蔵事務官石川三夫作成の固定資産合計額調査書
(7) 前払費用について、
一、大蔵事務官石川三夫作成の前払費用調査書
(8) 出資金について、
一、宮本茲寿の大蔵事務官に対する質問てん末書
(9) 未払金について
一、鈴木順治作成の回答書
一、大蔵事務官石川三夫作成の未払金調査書
(10) 借借金について
一、伊部禧作の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、大蔵事務官石川三夫作成の借入金残高及び支払利息調査書
(11) 利子所得、分離課税利子所得について、
一、大蔵事務官石川三夫作成の利子所得内訳明細表並びに簿外受取利息等検討表
(12) 配当所得、分離課税配当所得について、
一、伊部禧作の大蔵事務官に対する質問てん末書
一、中央信託銀行証券代行部池田山分室登録課作成の回答書
(13) 仮受金について、
一、押収にかかる振替伝票四綴(15)
(法令の適用)
被告人の判示各所為は、いずれも所得税法第二三八条第一項に該当するところ、情状により懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については同法第四七条本文、第一〇条により最も犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑については同法第四八条第二項によりその合算額の範囲内でこれを科すべく、よつて被告人を右刑期並びに金額の範囲内において懲役四月及び罰金四五〇万円に処し、罰金不完納の場合の換刑処分については、同法第一八条第一項により金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置し、なお諸般の情状を考慮して同法第二五条第一項を適用し、本裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 近藤暁)
別紙一
修正貸借対照表
内田文雄 昭和40年12月31日
<省略>
別紙二
修正貸借対照表
内田文雄 昭和42年12月31日
<省略>
別紙三
修正貸借対照表
内田文雄 昭和42年12月31日
<省略>
別紙四
税額計算書
昭和40年度
<省略>
別紙五
税額計算書
昭和41年度
<省略>
別紙六
税額計算書
昭和42年度
<省略>